「音象工房」のリーダーである木村俊介が、同メンバーのマリンバ奏者、那須律子とヴァイオリン奏者、西田ひろみをゲストに迎えライブを行なった。作曲も手がける木村俊介の自作8曲とアレンジもの1曲による構成。この日は新曲も初演された。「季節の変わり目の風の香に、夕暮れ時の子ども達の声に、祭りの宵の色彩の渦に、言葉にならない想いが胸を満たす瞬間があります。音を通してそんな瞬間が創りだせたら、遠い記憶や心象風景を描いていただけたら、という想いで曲を創ってみました・・・」プログラムに彼が書いているように、木村俊介の曲とその演奏には、音を通じて表現していこうとする確固たる世界が存在する。それは彼自身の中に広がる風景であり、精彩を帯びて生き続ける様々な記憶、自然の色・音・感触の再生(再構成)であったりする。ある意味で言えば「描く音楽」なのかもしれない。それは絵画で喩えれば、色彩や形象が外界の何物も表現しない、言わば抽象絵画のような色と形による自由な饗宴というよりも、人間の内面に取り入れられた自然、外界の再創造なのである。木村俊介の演奏を聴いていて、いつも感じるのは「祈り」があるということだ。彼の体感、経験した世界の美しいひとコマをもう一度自分自身の内面の中で蘇らせながら、他者へ「その世界」を伝えたいという思いをひしひしと感じるのである。(鬼楽)